クフでダローバルな日記

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愛とはなにか1 プラトン『饗宴』その1

超久しぶりの更新ですが最近色々あって色々こじらせて、「愛とはなにか?」とか考える日々を送ってしまっています。
というわけで、もともとプラトンの著作に興味あったこともあり、『饗宴』を読んでみました。

饗宴 (岩波文庫)

饗宴 (岩波文庫)

この本について簡単に説明すると、著名なギリシャ人達が宴会の席で愛(エロス)賛美の演説を一人やっていく様子を描いた対話篇です。
プロットの仕方が、
エロス耽美の宴会があった噂を耳にした人がその宴会を知っているというアポロドロスに尋ねると、アポロドロス自身もソクラテスの敬愛者であるアリストデモスから聞いた話で、更にはプラトンの演説自体がプラトンが昔外国人女性に聞いたもの
というなんとも層の深い語り口で、この描き方がプラトンの詩的才能を示しているそうですが、文学的教養ゼロの僕にはよく分からない話です。

ただ、この描き方自体がソクラテスの「無知の知」をよく示したものであるというのは納得できますし、読んでいてそれぞれが語っている様子がイメージしやすく、たしかに文学としても秀作なのかなとは感じました。

この作品では六人のエロス賛美演説者と、一人のソクラテス賛美演説者が登場するので、各人の趣旨と思われるところを簡単に書いておきます。
超簡単な言葉にしてるので不備があると思いますが、より知りたくなったら読んでみてください(・ω<)


1. ファイドロス
この演説会の主題提唱者で、このテーマを提示した理由は、「塩でさえ賛美されているのに、エロスの神について賛美したものは一人もいないのはおかしい」とのこと。
提唱者なのでトップバッターになっていて、趣旨としては
「エロスは神々の中で一番最初に作られたんだから尊敬すべき」
「『男は恥ずべき行いを愛する少年に見られる時もっとも恥じる』、『他者のために死のうとするのは唯一愛する相手の時だけ』で、そのために人に勇気を与える存在のエロスはすごい。」
といった感じです。個人的にはギリシャ人は少年愛を格別良い恋愛としていることを知らなかったのでちょっとびっくりでしたが。


2. パゥサニヤス
「いやいやエロスには二種類あるからどっちを賞賛するか決めなきゃ。その二種類っていうのは高貴なものと、大衆向けのもの。」
「大衆向けの愛は外面などを愛するけど、高貴なものでは魂を愛する。なぜなら、外面などは永久のものではないけど、魂は永久のものであり、永久の徳を得ようと向上する人間は神々に賞賛される者だから。」

圧倒的二項対立!
個人的に、大衆をバカにする感じの話は好きではないんですけど、恋愛においてよく言われる「その人の内面を愛しましょう」というよく分からないメッセージについての原因を与えているのがとても好きです。恋愛は徳の向上なんですねぇ。


3. エリュキシマコス
この人は医者です。だから他の人に比べると比較的科学っぽいです。っていってももちろんギリシャ時代で科学というものがまだ哲学と峻別されていないので、現代の「科学的」とは大きく異なりますが…。
「パゥサニヤスの2つあるって意見はあってる!ただ、エロスは人間の魂の中だけでも、少年に対するものだけではなくて、動物とか植物とか、宇宙のあらゆるものの中に存在する。」
「良い物だけを愛するエロスと良くないものも愛するエロスがどこにでもあるので、後者にとらわれないように注意するべき」

抽象的でよくわからない……。プラトンの「少世界・中世界・大世界の全てを支配する統一原理がある」という立場的に、人間から一般化したこの人は重要…らしいです。


4. アリストファネス
詩人です。ヤバイです。人間の昔の姿を描いてるんですが、それがヤバイ。
両性具有(アンドロギュノス)の寓話です。
動画あったんで貼っておきます↓

Speech of Aristophanes - YouTube

字幕がアリストファネスの語ったことなんですが、簡単に言うと
「昔人は球体で男の部分と女の部分を両方持ってたんだけど、半分に割られちゃったので、本来一体だったはずのもう半分を探すことになる。」
そうです。
しかし球体の人間キモい。ヤバイ。
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ただ、この前提のもとでの結論はなかなか筋が通っていて、
「本来一体だったはずの半身を見つけたら人はその人と一体となることを望む。それはもう一人の運命を自らのものとし、完全なものとなろうとするからだ。」
らしい。
いやー…しかし……キモい



残った二人は特に重要っぽいので、また別に書きます。