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クフでダローバルな日記

タフでもグローバルもない

結局ダーウィンは正しかったのか? 『生物進化を考える』木村資生

ある本で、以下の様なことが書かれていました。
「生物がある行為をする直接の原因を知ることは生理学で可能だが、根本的な目的というのは進化学によってしか知ることができない。」
例えるならば、例えば数万年後の人類が「自転車」なるものを発見し、「これは車輪を回転させることでジャイロ効果が発生し、倒れなくなるものだ」ということが分かったとしてもそれは大して重要ではなく、それよりも重要な事は「この時代の人間はこれに乗ることで移動が用意になった」ということですよね。
この重要な後者を知る作業が進化学の領域であり、生物の仕組みを知る上で重要なことなのです。

そこで、今回はこの本を紹介します。

生物進化を考える (岩波新書)

生物進化を考える (岩波新書)


この本の著者木村資生先生は生物学の最高の賞とされるダーウィン・メダルを日本人として唯一獲得した集団遺伝学者さんです。だからといってこの新書が難しいかというと全然そんなことはなく、ダーウィンの進化論(およびその前少し)から現在の分子生物学にいたるまでの知識を平易に、具体例も豊富に書いてくれています。


進化論に関して多くの人が誤解していることとして、「進化はその種にとって必ず良い方向に起こる」というものがあります。
これに対する否定として、「進化の中立説」というものがあり、概要としては「進化は良い方向にも悪い方向にもあまり生存率が変わらない方向にも起こり、結果として良いもの・普通のものが生き残りやすい」らしいです。
さらに、これの根拠付けとして木村先生が提唱したのが「分子進化の中立説」、すなわち「遺伝子を構成する分子は意外と頻繁に突然変異しており、それが良いもの・普通のものであれば他の個体にも広まって行きやすいし、悪ければ広まりにくい。」という説です。
突然変異が意外と頻繁に起こりうる」というのはよくある進化論への反論である「突然変異を繰り返すだけでは人間になるためにもっと時間がかかるはずだ」というものへの反論になっていますね。
ちなみにさっき調べていた時見つけたこちらのサイトも面白かったので紹介しておきます。
進化論の否定論者がなぜ間違っているかをシミュレーションで説明してみた - TEXT/YUBASCRIPT


この本では最後のほうで少し優生学についても触れているのですが、僕はそれになかなか考えさせられました。少し長いですが引用します。

優生の問題を考えるとき、すぐに頭に浮かぶのは、突然変異蓄積の害である。医学の進歩とともに死亡率が激減し、不妊が治療され、さらに家族計画が徹底してくると、異なった夫婦の間で、時代に寄与する子供の数の間に差が少なくなって、厳密な意味での自然淘汰は次第に減少することになる。このために、突然変異の除去は次第に困難になる。

つまり、上の分子進化の中立説に沿って言うならば、「遺伝子病は本来生存率を下げるものとして除去されてきたが、医学の発展により生存率を変えないものとなってしまい、他の個体に広まりやすくなる」ということです。
もちろん今暮らしている障碍者の方の尊厳は守られるべきですし、生まれてきた子どもが障碍を持っているからといって殺されるということは現代の倫理観のもとではあってはいけないものです。ただ、これから生まれてきうる子どもに関しては単に障碍者をサポートする社会的コストだけでなく、未来世代の障碍についても考えるべきなんでしょうね。
その観点から見れば昨今のダウン症を発見する血液検査も、より一般に受け入れられるべきなのかなと感じました。


ついでに前読んだ他の生命科学の新書も紹介しておきます。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)


あの福岡伸一さんの本で、「新書大賞」とか受賞してるし、あの茂木健一郎さんも絶賛しているので、素晴らしい本です!一番好きな新書です!!()
内容は生物と無生物の違いについて説明するのかとおもいきや大半が生命科学関係ないエッセイで、僕は当時知らなかったのですが真の生物科学者が読むと間違っているところも多いそうです。
というわけで基本的にオススメできませんが、科学リテラシーを実践的に身につけるための本にはなりうるのではないでしょうか?