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クフでダローバルな日記

タフでもグローバルもない

セックスはなぜ楽しいか 『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』ジャレド・ダイアモンド

読書記録

この前進化の本についての記事を書きました。その前には愛とはなにかの記事も書きました。
あの二冊の本を読んだ後、愛とは何かを生物学的な見地から知りたいと思い、この本を読みました。

文庫 人間の性はなぜ奇妙に進化したのか (草思社文庫)

文庫 人間の性はなぜ奇妙に進化したのか (草思社文庫)

ちなみにタイトルの「セックスはなぜ楽しいか」っていうのはこの本の現代、"Why sex is fun?"を直訳したもので、この本が文庫化する前のタイトルです。

人間の性がどう異常なのかは、冒頭に現れる飼い犬がほぼ語り尽くしてくれてます。
それなりに長いので最初のところだけ引用しておくと、

あの気色悪い人間たちときたら、月のどの日でもセックスをするんです!

とのことです。

言われてみるとたいていの動物は発情期にしか交尾をしないのに、人間は「発情期」というものを「発情期にヤりまくる変態」みたいに捉えているところがあります。しかしよく考えてみると、やろうと思えば一年中毎日セックスしている人間の方が「変態」で「異常」なんですね。

この本のスタンスとしてはこのような人間の性の異常な点がどうして生じたのかを進化による選択として考え、理由づけしていくものです。この過程で様々な研究者の研究結果が引用されるので、単に人間の性について知るだけではなく、進化学の入門書としても楽しめました。

「セックスはなぜ楽しいか」の答えは四章にあるのですが、そこで解説されている研究の手法が興味深かったので紹介しておきます。

そもそも人間に発情期がなく、ほぼ毎日セックスをしうる(※ただしイケ…)理由は人の女性では排卵が隠蔽されており、さらには女性自身も正確な受精可能時期を把握していないからだそうです。
僕は男なのでよく知らないのですが、ルナルナ(よく知らない)とかオギノ式(よく知らない)とかがあるらしいので多分わからないんでしょうね。

そして、なぜ排卵が隠蔽されているかという説が2つ、それも真逆の2つがあります。
受精可能時期がわからないことでパートナーとだけ毎日セックスするようになるとする「マイホームパパ説」、どの男性との交尾で出来た子どもなのかわからなくすることで、父親が他のオスの子を殺す行為を減らす「たくさんの父親説」です。
前者が夫婦関係を結束させるポジティブなもので、一夫一妻制を増長させるものであるのに対し、後者は自分の子であるかもしれないという疑いを利用したネガティブでハーレムや乱婚を増長させるものですね。
もちろん後者は現代社会の常識に反したものなのですが、進化という時間のかかるものの特性上、現代の倫理に反するからと言って間違いとは断定できません。

ではどのようにして判断したのかというと、進化学者がよく用いる手法の「種間比較法」というものを用いています。具体的には霊長類を排卵のシグナルを表す度合い及び交尾の形式ごとに分類し、どのように進化してきたかを種の系統樹から判断するということです。
例えばヒトに近いチンパンジー、ゴリラについて考えてみると、以下のような進化をしたことが分かります。
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細かいデータ等は省略しますが、霊長類の祖先が「排卵のサインをわずかに出す、乱婚の動物」であることがわかり、そこからどのように進化してきたかを見ると、以下の事がわかったそうです。
排卵が隠蔽するように進化したのは、乱婚かハーレムの時であることが多く、たくさんの父親説と合致します。
逆に、一夫一妻制に進化したのは排卵が隠蔽された種の時であることが多く、マイホームパパ説と合致します。

どちらが正しいか研究していたのにどちらも正しいという結論が出てしまいましたが、これを解決する方法が、「人間へと進化するまでには段階的な進化をした」というものです。つまり、「ハーレムで排卵シグナルがわずか」だった先祖が、たくさんの父親説のように「ハーレムで排卵を隠す」ように進化した後、さらに「排卵を隠したことで一夫一妻制」に進化したということです。

「異常な性」が複雑な進化を経たものであることや、進化学がどのようにして進化の理由を判断するのかがよく分かり、個人的にはとても面白かったです。

この本では他の章立てとして、「なぜ男は授乳しないのか?」「男は何の役に立つか?」「セックスアピールの真実」など、面白いテーマが多く収録されているので是非読んでみてください。


ただ、この本の最も重要なメッセージは

おそらくヒトという種の最大の特色は、進化に対抗する選択ができるという能力にある。これはほかの動物にはないものだ。人類のほとんどは、自ら選んで殺人やレイプや大量殺戮を放棄している。しかしこうした行為はほかの動物の世界では遺伝子を後世に伝える有効手段として当たり前のことだし、人間社会でも以前はよく見られたことなのである。

というものだと思っています。遺伝子の乗り物にすぎない人間にとっていかに浮気などが遺伝子にとって有効なものだとしても、やはり人間は倫理や道徳に従って浮気などはしないべきで、同様に、子孫を残す上でいくらセックスが大切だといえども、それを恋愛の基準に置くべきではないんでしょうね。




ところで実際のところセックスは楽しいんでしょうか。私は処女なのでそういうのよくわかりません>